よくたべよくねてよくあそぶ

一難去って、また一難 ぶっちゃけありえない!!(プリキュア)と思いながら労働している大人のオタク

「喜嶋先生の静かな世界(森博嗣)」を読みました

※明確なネタバレはないけどふんわりネタバレです

 

私はゴリゴリの文系で、右脳派(多分…知らんけど…)で、理論より感情で動く人間だ。私にはこの本にでてくる彼等に共感することはできないし、きっと彼等にとっても私は不思議だと思う。

 

その時私は気になっていた人から俗に言う"脈なし"の返信がきて落ち込んでいた。こんなんで落ち込むなんて中学生じゃあるまいしいい歳してしょうもな、、、情けないしクソだせえ〜と自分で自分が居た堪れなくなったのでちょっとでも余裕のある大人のふりをしなければと思い立ち(付け焼き刃選手権大優勝!!!)下心いっぱいで駆け込んだ本屋さんで「心を整えてくれる小説」という帯がついたこの本に飛びついてしまった。

 

物語の主人公である橋場くんは私とは正反対だ。そして、タイトルにもある喜嶋先生は私の正反対にいる橋場くんの水平線上のもっと遠い先にいる人だ。

彼等は日々のほぼ全てを研究に費やす。それは時間はもちろん頭の中の容量いっぱいも、だ。それ以外のことが入る隙間がない。忖度はしないし、真実が解りようのない他人の感情を憶測したりしないし、そのせいでどう思われるかも良くも悪くも気にしていないみたいだ。シンプルにそのままを言葉にする。私はとにかく波風立たせたくない芸人なので、喜嶋先生のような人が近くにいたら間違いなくなんだコイツ…!!って思ったと思う。

けど、橋場くんがひたすらに研究向き合う数年間を読むと、そんな喜嶋先生のことを尊敬する意味もなんとなく分からなくもない。

 

橋場くんも、喜嶋先生ほどではないけれど研究以外のことにはかなり無頓着だ。無頓着というか、好奇心が研究以外にあまり向かないというか…(作中のヒロインである沢村さんみたいな例外もあるけれど)

でも橋場くんが嫌なやつじゃないところは、私みたいに勉学以外のことばかりあれこれ気になる人のことも、人それぞれだからと否定しないところだな〜と思った。いいやつ。

 

「つまり、理由を言葉で聞いても、結局はその意味するところは、抽象化できない。抽象化できないものは、つまり理解できないものなんだ。言葉を聞いても、理解したことにはならないんだ」

彼女から職場のヘビーなゴシップ話を聞いても特に何もつっこまない橋場くんが、気にならないの?と聞かれて答えたセリフだ。素っ気ない?冷たい?ようで誠実で信頼できるなと思った。

その彼女のスピカちゃん(作者の奥さんがモデル?って言われているみたいですが)は多分、右脳派というか私側の人間なのだと思うけど、それでいて考え方の違う橋場くんに対しての接し方がとっても素敵だし、なんか…これが選ばれる女……と思いました(言い方)

私も理系の男に惚れたら参考にします。。。

 

お話自体はあんまり読んだことないタイプのお話で、割とボリュームがあるけどくどくなく淡々と書いてくれているのが、頻繁に読書するわけじゃない私でも読みやすかったです。(喜嶋先生いつ出てくるんや?!?て前半はずっと思ってた)

結末はびっくりしたけど、私が同じ事象を書くならそれに対してたくさん気持ちとか憶測とか?ねじ込んじゃいそうなところをただ淡々と書いてあるところが「結末のあっさりした書き方はまさに作中の橋場くんの言葉どおり*1だ」との感想をお見かけして、なるほどなってとっても腑に落ちました。

 

橋場くんも喜嶋先生もきっと、私みたいに相手の返事に一喜一憂して急に目についた本を衝動買いしたりしないだろうな…

2人みたいに生きるのはとても美しいなと思ったけど、この本を手に取ったきっかけは私の情緒不安定のおかげでもあるのでまあ…悪くはないか…ガハハ!!😄って思っています。(心整わず)

 

 

*1:「つまり、理由を言葉で聞いても、結局はその意味するところは、抽象化できない。抽象化できないものは、つまり理解できないものなんだ。言葉を聞いても、理解したことにはならないんだ」